フレームワークが問題解決において役に立つということは分かる。でも、フレームワークを使うこと自体が目的化してしまうことがある…。当記事は、より有効に、フレームワークを活用できるようになりたい、という方向けのコラムです。
簡単に言うと、フレームワークを活かしきれないという問題を解消するために、「自分オリジナルのフレームワークを考えることで、フレームワークへの理解を深めてみてはどうか?」というのがこの記事の主な内容です。フレームワークをより効果的に活用したいという方はぜひチェックしてみてください。
フレームワーク思考のメリットとデメリット
まず、「フレームワーク」を用いて思考を行うことのメリットとデメリットについて大まかなポイントを振り返ってみます。「フレームワーク」とは「思考の枠組み」を意味し、先人たちが培ってきた問題解決の型を誰でも使えるように汎用化したものです。
フレームワーク思考のメリット
思考の領域を特定することで効果的で効率的なアウトプットを行う
私たちは、フレームワークを用いることによって、今考えるべきポイントを明確にし、必要な場所に必要なだけの思考(資源)を巡らせることができるようになります。
例えばマーケティングについて考えようと思った時、ただ漠然と思考を行うよりも、「4P」の項目に沿って考える方が、論点を明確にして思考を行うことができるでしょう。また、バリューチェーンを考えることによって、サービス提供の一連の流れを俯瞰して考えることができるようになります。ゼロからサービスの流れを考えろと言われると難しいので、こうしたフレームワークがあると助かります。
なお、フレームワークのメリットについては、下記の記事内でも紹介しているので、よければ合わせてチェックしてみてください。
ビジネスフレームワークを活用して問題解決を加速させる【オススメの基本フレームワーク紹介】
定番フレームワークの例
具体的なイメージを掴むために、いくつか定番のフレームワークを見てみましょう。
4P
4Pはマーケティングを考える際に用いられるフレームワークで、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の4つの頭文字を取って4Pと呼ばれます。
3C
3CはCustomer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの要素を分析することによって、事業戦略やマーケティング戦略、営業戦略などを考えるフレームワークです。
バリューチェーン
バリューチェーンは日本語にすると「価値連鎖」と訳され、企業が顧客に対して提供する価値の繋がりを可視化・設計するフレームワークです。通常、価値の提供には商品の開発から顧客への営業まで、長いプロセスがあるため、その全体像を捉えるのは難しく、こうしたフレームワークがあることで、漏れ無く思考を進めることが可能です。
フレームワーク思考のデメリット(注意点)
フレームワークを使うことが目的化してしまい思考が囚われる
便利な問題解決のツールであるフレームワークですが、扱い方を誤ればそれは負の効果も及ぼします。一番陥りがちなパターンが、フレームワークを埋めること自体が「目的化」してしまうことです。そもそもの上位目的を見失って、情報を整理・分析することがゴールとなり、最終的な目的を達成できずに終わってしまう状況です。
「枠」の中に思考が制限されてしまう
また、思考の領域を特定して思考を進めるというメリットが、逆にデメリットとして作用する場合もあります。思考の枠組みの中に思考が制限されてしまい、本来あったはずの柔軟な思考や選択肢が消えてしまうというものです。
フレームワークを使うこと自体が目的化してしまう、そして思考が制限されてしまうという2つのデメリットについては、フレームワークを活用する上で避けて通ることのできない、検討要素と言えるでしょう。以下では、一つの対応策を考えてみます。
デメリットを解消するには自分でフレームワークを作ってみること
フレームワークという概念そのものについて考えてみる
そんなフレームワークのデメリットに対して、どのように向き合っていけば良いでしょうか。まず言えるのは、「フレームワーク」というものに対する理解を深めるということです。フレームワークとはそもそも何か、どんな背景や意図があってフレームワークが生まれるのか、といったことに思考を巡らせてみます。
使いこなせるフレームワークは多くなくていい
フレームワークは数百という数存在しますが、それら全てを使いこなせる必要はありません。フレームワークについて理解を深めるためには、一通りチェックしてみた後、まず、自分の業務に関連度の高いフレームワークを少ない数でも良いので、きちんと理解して使えるようになることが大切です。
料理を学ぼうと思った際にも、一つの料理をきちんとマスターすれば、同じように他の料理にもチャレンジすることができるように、フレームワークも、まずきちんと一つのフレームワークをマスターすることが大切であるという訳です。
自分オリジナルのフレームワークを作る
そして、フレームワークへの理解を最も深めるのが、自分でフレームワークを作ってみるというアプローチです。料理本をたくさん読んで先人たちのコツを学ぶのも良いですが、実際に自身がコツをまとめる経験をする方が学びが深く、その経験があることによって、既存のコツもさらに有効に活用できるようになるでしょう。
フレームワークも同じで、既存のフレームワークを活用できるようになってきたら、最終的には自分のオリジナルのフレームワークを考案するというステップへチャレンジしてみることが重要です。
そうしてフレームワークがどのような流れで、どのような背景を持って生まれているのかを体験することで、数あるフレームワークを目的に合わせて、適切に活用できるようになるでしょう。
自分オリジナルのフレームワークを考えてみる
自分の思考や行動を棚卸する
自分が日々の業務の中でどんな思考や行動を行っているかを棚卸してみます。営業やマーケティング、意思決定、顧客対応、商品陳列、デザイン、会議、清掃業務などなど、挙げだすときりがありませんが、自分の一日を振り返ってみてください。
経験を振り返って上手くポイントを誰かに説明するつもりでまとめる
棚卸した自分の思考や行動について、経験した内容の中から要点を抽出してフレームワーク化します。「抽出してフレームワーク化する」というのは、同じように上手くいくコツをまとめたり、共通の論点をまとめたり、全体のフローや関係性をフォーマット化するといったニュアンスです。
例えば営業マンであれば、「新規開拓時の初回訪問時に成約率を高めるための検討要素」をまとめてみたり、会議担当者であれば、「アイデアが活発に生まれる会議の流れ」を自分なりにまとめてみるといったイメージです。
筆者の例
例えば筆者の例を挙げてみます。私このところ、ワークショップの構成やファシリテーションを担当させていただく機会が増えました。ワークショップをいろいろな場所で考えて行く過程で、自分なりに「ワークショップを構成するためのフレームワーク」を考えてみました。
既存のフレームワークである「As is / To be」と「Why・What・How」そして「具体・抽象⇆客観と主観のマトリクス」を合わせたイメージですね。私の場合、これらの項目について思考することで、ワークショップの内容をより効果的に・より早く考えることができます。この辺りの話については、下記の記事で紹介しています。
ワークショップの内容を構成する際に考えていること【スタッフブログ】
補足:コルブの経験学習モデルを意識する
自分でオリジナルのフレームワークを考えるというイメージは何となく掴めたでしょうか。あまり難しく考えずに、自身の経験を抽象化してまとめ、別の場所でも応用するにはどんな形にまとめて保管しておけば良いか?という視点で考えてみてください。
この時に知っておくと思考が捗るのが「コルブの経験学習モデル」です。これは、具体的な経験から省察、抽象化し、また別の経験へとサイクルを回していくというものです。まさに今回の論点である「自分の経験からフレームワークを考える」というのは、このコルブの経験学習モデルにおける「抽象的概念化」に該当します。
コルブの経験学習モデルについては、下記の記事でも紹介しているので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。
経験を学びに変えるために知っておきたい「コルブの経験学習モデル」
おわりに
以上、自分オリジナルのフレームワークを考えてみよう【フレームワーク活用コラム】についてでした。問題解決の様々な場面で活躍するフレームワーク、その効果を最大限に活用できるよう、ぜひ一度、フレームワークを考える(生み出す)ことにチャレンジしてみてください。